第3話「何も持ってないのに売れる!?」

何故手元に何もないのに「売り」から取引をスタートすることができるのか?
例えば貴方がトウモロコシ農家だとしよう。
例年50tものトウモロコシを作っている貴方は、一つ心配事がある。
ちょうど今の時点ではトウモロコシ50tは120万円で取引されている。
今からトウモロコシを作る手間や費用を考えれば、採算は合う価格だ。

 

ただ収穫期に全世界的に豊作になっていれば、さあ市場に売りに行こうと思った時には今よりトウモロコシの価格はもっと値下がりしているかもしれない。 そこでちょうど収穫時期にあたる6ヶ月後のトウモロコシ50tの価格が、先物取引市場でも120万円と値付けされ取引されているのを見て、今の時点で先にトウモロコシ50tを売るという売買契約を結んでおこうと考えたのである。

 

先物の仕組み 何も持ってないのに売れる!?先物の仕組み 何も持ってないのに売れる!?

 

数ヵ月後、やはり悪い予感は的中し、全世界的にトウモロコシが大豊作となり、トウモロコシ50tの価格はいまや110万円どころか、100万円で取引されている。
普通であれば大損害である。
しかし貴方は既にトウモロコシ50tを120万円で売る契約を済ませている。
だからいくらその後値下がりしても問題ない。
これが実際にトウモロコシ農家が行なうヘッジ(保険)の基本的手法だ。

 

貴方はもちろんトウモロコシ農家ではないだろうが、それでも先物取引市場では「売り」から取引を開始することができる。
何故なら先物取引市場で「買う」「売る」というのは、あくまで最終的にはその価格でモノとお金の交換をすることができる権利を持っているだけで、モノとお金の交換は強制ではないからだ。

 

モノを持っていなければ同等分の「買い」を行ない、その分を割り当てればプラスマイナスゼロとなり、そこで取引を終了させることができるのである。 この時、当然その「売った価格」と「買った価格」の差額が損益となるため、
先ほどの例のように「売った価格」>「買った価格」となれば、その分が利益となる。
逆に「売った価格」<「買った価格」となれば、その分損失となる。
そう、「買い」からスタートしても「売り」からスタートしても、「差金決済」であればその順番は関係ないのだ。
このように「値上がり」を予測した場合は「買い」から、また「値下がり」を予測した場合は「売り」からというように、自由に売買が行なえるという面白さも先物取引のダイナミズムの一つなのだ。