トランプ大統領の保護貿易は本気度100%!
トランプ大統領は、いよいよ米国の貿易赤字解消へと動き出しました。【米国ファースト・米国に雇用を取り戻す】、選挙前からの大事な公約ですからね。海外でモノを作るより自国で作るためには、赤字解消は重要な政策。
商品先物取引にもトランプ政権の保護貿易主義は大きな影響
米国の2017年12月貿易赤字額は、531億1800万ドルと2008年10月以来の高水準。巨額に膨らんだ貿易赤字を続けると、理論的にはドル安の方向に進み、かつてのプラザ合意やニクソンショックのように、大きなドル安ショックが起きるかも。中国の台頭で、米国の力は相対的に下がり、世界は変化していることを忘れてはいけません。
そして、貿易黒字の通貨は買われて、赤字の通貨は売りが為替相場のセオリー。
貿易赤字を減らすために、通貨安は有効な方法。貿易黒字国は、貿易で手に入れた米ドルを売り自国通貨を買うために通貨高になりやすく、貿易赤字国は、代金支払いのために米ドルを買い自国通貨を売るために通貨安になりやすいため。
米国は、基軸通貨国&巨額の貿易赤字のために、米国債を大量に発行して、日本や中国をはじめとした世界各国に購入してもらうシステム。米ドル安になると、購入した米国債に為替差損が生じることから、買い手(中国・日本など)・売り手(米国)ともに、安定した強い米ドルを必要とします。
しかし、トランプ大統領の赤字解消=関税強化政策が次々に公表されたことで、市場はドル安へと反応。これは、【強い米ドルよりも貿易赤字の解消を優先する】というメッセージであり、中国や欧州・日本に対し保護貿易を行うぞという脅しにもなっています。
減税&貿易赤字削減によって、米国経済を立て直すことは、トランプ政権の公約。よくも悪くも有言実行のトランプ大統領をストップするのは不可能。
2017年の貿易統計(2018/2/6:米商務省)
- モノの貿易赤字:7962億ドル
- 対中国:3752億ドル
- 対メキシコ:711億ドル
- サービス収支の黒字:2440億ドル
- 貿易収支全体:5522億ドルの赤字
上の数字を見ると対中国の赤字額が非常に大きいことが分かります。つまり、貿易問題でのトランプ政権の本命は中国で、対抗はメキシコ。鉄鋼・アルミニウムに続いて、いよいよ、知的財産権の侵害による関税強化という中国への対抗策を打ち出しました。
関税という保護貿易強化によって、金(ゴールド)は、大幅上昇。商品先物市場は、大騒ぎになりました。もし、米国と中国の間で、貿易戦争が勃発すれば、戦争・紛争といった有事リスクが高まることから米ドルが売られて金が買われやすくなるでしょう。
内に籠る米国と自由貿易が国益となった中国
冷戦時代は、自由貿易を米国が守り、閉ざされた経済圏を作っていたのが中国。21世紀、世界の工場になった中国は、自由貿易が国益です。逆に、関税などで制限をかける保護貿易を実行するのが米国と立場は逆転。
食料・エネルギー・人口・土地に不足のない米国
米国は、シェール革命で原油生産が大幅に増加して、エネルギーの自給が可能となりました。さらに、広い国土と資源&人口を持ち、極端に言えば、自国で経済を完結させることが可能です。商品先物取引で扱う大豆・コーンの生産量を見ても分かるように食料すら握っています。
一方、中国は、世界の工場となったために、自国で生産した商品を他国に売らねばならず、エネルギー・食料を国外に頼る立場で、貿易が大事。
すなわち、自由貿易・保護貿易のどちらが優れているというよりも、両国とも国益に沿って動いているわけですね。
トランプ大統領の交渉手法
トランプ大統領のやり方は、最初に厳しい要求を突き付けてから交渉スタート。それも、最高レベルの要求を突き付けます。そこからお互いに譲歩しあって最終合意に至るという手法。
そのため、保護貿易による関税強化=米中で戦争がはじまるという程、有事リスクが高まっているわけではありません。
ただ、中国側も習近平政権が権力強化に動いており、メンツ&中国国内の景気維持が大事。内需拡大での貿易赤字削減が難しいのは、米国に同じ要求を突き付けられてバブル化した日本の例を見ても理解しているはず。ということは、のらりくらりと要求を呑むふりをしながら時間稼ぎをしてくるでしょう。北朝鮮やロシア・イランとの連携なども中国の保有カード。米中の貿易交渉は一進一退で時間がかかると思います。
米ドル安でインフレの可能性あり
◆米中貿易交渉のシナリオ例
結果的に、米中の貿易紛争は長引き、有事リスクへの警戒感が、金や原油価格を下支えすることになるのではないでしょうか。そして、貿易に関する交渉の過程で、為替相場が米ドル安に動けば、原油・金をはじめとした商品先物が上昇する可能性があります。