パウエル議長が、過剰流動性相場終焉の引き金を引いて、2018年が終わる
中央銀行の量的緩和によって生じた過剰な流動性相場=金余りによる株価上昇相場は、終わりました。最後のきっかけになったFRBパウエル議長の12月利上げ以降もリスク警戒感から金が買われており、株価の行方は怪しいまま。
過剰流動性相場の終わり
2018年秋以降の株価下落の勢いは激しく、押し目レベルでは済まない可能性があることは、一般ニュースでも話題に。そして、金の上昇についても、目にする機会が増えるでしょう。
何しろ、世界景気は、米中の貿易戦争や欧州経済の悪化により、2019年以降に成長が鈍くなりそうで、FRBもECBも懸念を表明しています。
トランプ大統領の中間選挙シナリオ
トランプ大統領は、中間選挙で勝つことを目的に、減税や公共政策を実施。FRBにも低金利政策を要求することで、米株式市場の上昇を目指すシナリオが市場の予想でした。
ここにきて、上記シナリオが崩れています。
2018年12月FOMCでの利上げ
ところが・・・FRBは、トランプ大統領の口撃に耐えて、利上げを実行。パウエル議長は、下落傾向の株価を維持することをせず、NY株は、大幅な下落。
その前に、ECBは、債券買い入れプログラムを2018年で終了すると宣言。日米欧の中央銀行は、日本以外、量的緩和の出口戦略を実行しています。つまり、過剰な流動性相場が終わる余地は出来上がっているのです。
問題は、FRB・ECB・日銀などがどのような行動に出るか。金融市場を支えるために、量的緩和の再開や利下げ方向に動くのか。日本のバブル崩壊やサブプライムローン危機のように、後手を踏むのかです。
リーマン・ショックのように、金融機関がバタバタと倒れるような自体・金融市場の崩壊リスクが生じれば、さすがに、中央銀行は動くはず。しかし、株式市場が下げているだけでは、動きにくい。利上げストップやFRBのバランスシート縮小(資産縮小)ストップを催促する相場になるのではと思います。
中央銀行の金融資産:金融危機以降、中央銀行の資産は膨らむ一方。市場から債券やETFを買い込んだために、中央銀行は、大量の資産を抱える羽目に。
2018年12月 | 2014年1月 | |
FRB(米国) | 4.08兆ドル | 4.02兆ドル |
ECB(欧州) | 4.62兆ユーロ | 2.21兆ユーロ |
日銀(日本) | 551.8兆円 | 232兆円 |
データは、FRB
これを見ると、二倍以上に膨らんでいるECBと日銀に対して、FRBの資産は少なく見えます。次に、このチャートを見てください。
FRBの資産は、すでにパンパンに膨らんだ後。FRBの資産状況
●米国と欧州の経済成長率予測
ECBとFRBの経済成長率予測は、米国・欧州ともに、9月より12月時点の方が悪化。しかも、2018年より2019年・2020年の方が悪い。
中央銀行の株価維持策=プット(オプション用語)
困ったときには、中央銀行がなんとかしてくれるといういわゆる中央銀行プット(市場の下落に中央銀行が相場維持対策を取ること)。前任のイエレン氏・バーナンキ氏に比べて、現職のパウエル議長は、株価維持をしない姿勢に見えます。
これに対して、トランプ大統領は、FRB議長解任をほのめかすなど、怒り心頭。
リーマン・ショック後の株式市場は、中央銀行の量的緩和に支えられてきた官製相場。補助金漬けの事業と同じで、中央銀行の買い支えで、高値を維持している状態。それがなくなり、中央銀行の資金が引き上げられれば、以前と同じ水準とまではいかなくても、大幅な下げに見舞われるだろうということは、以前より予想されていたシナリオの一つ。
その株価下落シナリオは、当連載でも以前に指摘してきた通り。さて、目先は、株価調整の方向に進むでしょう。株価の乱高下に一喜一憂しないように覚悟しておくこと。
株価下落に対して上昇する金相場
さて、そのような危うい金融市況の中で、上昇している資産があります。それが、商品先物取引の代表銘柄【金=ゴールド】。
●NY金価格の日足チャート
資産の避難先として、金への注目は高まっています。
ただし、注意しなければいけないのは、国内金価格は、ドル安円高で値下がりしやすいこと。ドル安金高のセオリーで、NY金が上昇しても、円高の動きの方が大きいと、国内金価格は下げてしまいます。
ゆえに、国内金価格と海外金価格の動きに注意しながら、金を売買しましょう。上昇が続いた米株式市場は、一旦、踊り場にあると考えて、投資を行ってください。