NY金先物の目標値は、2,000ドル:上昇する理由とは?
FRBが10年7ヶ月ぶりに利下げへと方針転換する中、金先物価格が上昇していることは、本連載の読者にお伝えしていました。
FOMC利下げ示唆&イラン情勢をきっかけに、金先物は急上昇!
そこで、今回は、NY金価格が、どこまで上昇するのでしょうか。その理由をご紹介します。
NY金先物の目標は2,000ドル
すでに、いくつかの抵抗線をブレイクした今、長期的な目標を2,000ドルと考えています。現在の価格が約1,420ドルですから、大幅な上昇を予想していることになります。もちろん、これは、金先物にとってのグッドシナリオ、でも、あながち夢物語と言い切れないと思います。
さて、それでは、どうして、2,000ドルを目指す可能性があるのか理由についてお話しいたします。
中央銀行の量的緩和政策の限界とそれでも行う金融緩和
2019年7月末のFOMC(金融政策を決める会議)で、利下げへと転換する予定のFRB。これで、米欧日と主要先進国の中央銀行は、金融緩和へと揃い踏み。さらに、米国・ブラジル・メキシコなどの国は、大統領が金利引下げを要望。
金利を生まないゴールドにとって、金融緩和=金利低下は、強い上げ材料。つまり、金が上昇する材料は、揃いつつあります。
なぜなら、リーマン・ショック以降、中央銀行が必死に取り組んだ量的緩和は、デフレと景気悪化を食い止めるのがやっとでした。なんとか、景気が回復し、金利を上げられたのは米国のみ。その米国ですら、2.5%まで。リーマン・ショック前は、5.25%でしたから約半分。
景気を支えるための利下げ余地が少ない。
それどころか、欧州と日本は、金利引下げ余地のない中で、もしかすると、不景気の嵐に突入することになりかねません。これこそ、中央銀行がもっとも恐れていた事態です。
金利を引き下げる余地がない。資産買い入れなどの緩和策にも限界があり、マイナス金利を下げていけば、副作用を無視できず。そして、緩和の結果、世界中で積み上がる膨大な借金=負債。これは、金利が上昇すれば、利払いの負担が増えていくので、金利上昇させるわけにはいきません。
となると、政府及び中央銀行は、金利を上げられない!
金利を抑えるため・負債を支払うために、お金を印刷し続けるでしょう。民主主義の元では、よほどのことがない限り、大幅な増税もできませんし、お金を刷り続けてインフレにすることで、実質的な負債を減らす方法を取る可能性が高くなります。
その結果、金利は上昇しないように、中央銀行に抑えられ、通貨の価値は下がることになりやすい。
低金利通貨安=これぞ、ゴールドの大好物。もう、金は上がるしかありません。
米中露欧の覇権争いによるリスク増加で増える金購入
米国の覇権主義は、オバマ政権時代に終わりました。今は、トランプ政権の元、米国ファーストの方針。石油を自給できるようになり、テロとの戦争で矢面に立ち続けた米国民の疲れを反映しています。
米国が撤退したその穴を埋めるのがロシア・中国。各大国が、自国の勢力範囲を広げようと衝突するせいで、あちこちで紛争が起きています。強い支配者を失った後に、戦乱の世が訪れるのは歴史の常。
そういった紛争・戦争リスクが高まる時代は、金相場にプラス。中国・ロシアの中央銀行は、金の保有量を増やしていますし、民間での金需要も旺盛。
金鉱山の閉山や環境・人権問題への配慮
金鉱山での採掘は重労働。南アフリカの浅いところにあった金は、掘り尽くさてれてしまい、採掘条件は、厳しい。ただでさえ、採掘コストは上昇する上に、環境・労働問題への意識向上もコストに上乗せされます。
そのため、金鉱山の閉山は増えており、新規鉱山の採掘は伸び悩み。今後の需要増加に対して供給不安が台頭しています。
●NY金先物:月足チャート 2019年7月30日
テクニカル的にも良い形のチャネルができて、下値を切り上げています。
NY金相場は、2015年の安値1045.4ドルから切り返し。以前の抵抗ラインを破り、長期的な上昇ラインへと転換。今後、リーマン・ショック後と同じように、欧米の中央銀行が、緩和路線に向くことで、同じように上昇していくと予想します。さらに、紛争リスクの高まりなどがあわされば、2011年の高値1923.7ドルを目指す可能性があります。
ただし、短期的には、上昇トレンドのチャネル上限にぶつかっているため、押し目がありそうなチャート型に見えます。
令和は、金の価値が見直される時代になるのでしょうか。私の考えるNYの金市場の長期的目標は、2011年の高値2,000ドル前後。