失敗すれば、大恐慌から戦争に歩いた道が待つ:鍵は、4-6月期GDPのマイナスレベル!
新型コロナウイルスによる世界経済の不況及び縮小は、どこまで落ち込むのでしょうか。一旦、収まっても、医療や在宅ワーク関連産業以外の需要は、大きく下げたままで、回復の兆しはありません。
FRBのパウエル議長も大恐慌以来、最悪の状況を覚悟している旨の発言をするくらい、危ない状況です。大恐慌は、第二次世界大戦へとつながった近代における最悪の経済不況。そこに至る道には、何があったのでしょうか。同じ過ちを繰り返さないために、歴史に学ぶことは大切です。
コモディティ・株価の動きは、非常に大切です。金や原油・穀物といった物資の争奪戦が戦の一面ですから。
歴史の教科書には、ルーズベルト大統領や東条英機・ヒトラーといった個々人が始めたかのように描かれがちです。でも、戦争の背景にあるのは、経済(マネーやコモディティ)をめぐる争い。小国ならいざしらず、近代の戦争は、個人の野心や名誉欲で始まるものではありません。
大恐慌は、第二次大戦のきっかけに!
大恐慌は、1929年に米国で始まり、最終的に第二次大戦をもたらした大不況。第一次大戦後の好景気による生産過剰や株価の高騰があったあと、1929年10月24日のブラックマンデーで株価は暴落し、失業者が街に溢れました。
さて、この大恐慌から、経済を回復させるための施策の多くは、自国優先&格差拡大に繋がり、後々の戦争に・・・
米国は、ニューディール政策による公共工事をはじめとした政策を行い、FRBは、大量の国債購入など金融緩和を推進。金融政策によって、資産価格は上昇しましたが、(金やコモディティも上昇)実体経済への効果は弱く、富裕層との格差は拡大し、ポピュリズムやナショナリズムが世界中で台頭。さらに、英仏は、植民地を囲い込むブロック経済を行い、ブロック外との貿易を締め出す政策を実行。そのため、世界中で失業者が溢れ、植民地を持たない国を中心に、ファシズムが力を持ち第二次大戦が始まるきっかけになりました。
さて、コロナ後の世界経済が、戦争など危うい方向に向かっていくかどうかは、誰にもわかりません。人類の叡智が、戦争を避けてくれると信じたいところです。危うい道に進むかどうかを歴史から学ぶことが大切。米国の経済指標の一部推移。新型コロナウイルスの影響で、大幅に数字が悪化。消費も生産も双方ともに、大幅にマイナス。
Fed(連邦準備制度)のデータから、鉱工業生産は、リーマン・ショック時に近いレベルの落ち込み。下落の角度は、今回の方が急です。これだけ、鉱工業生産が落ちれば、経済が回復するまで、コモディティ需要の拡大は望みにくい。
●米国の鉱工業生産指数:2000年~
さて、そこで、現在の政治・経済で行っている政策を見てみましょう。これらの政策が悪い方向に傾けば、経済が悪化していきます。その点。原油・鉄・銅・銀などの需要が増えていくかどうかを見ておくこと。
1.過剰な金融緩和
量的緩和をはじめとした金融緩和をいくら続けても実体経済にさしたる影響はないというのは、最近の定説。それどころか資産価格だけを上昇させるという格差拡大につながるリスクあり。つまり、株価や金価格だけが上昇し、失業率やGDPなどのリアル経済を示す統計が、それに追いつかなければ、社会不安が起きることになります。
2.ブロック経済化
植民地こそなくなったものの、貿易同盟はあちこちに存在します。米中の関税戦争再燃や特定の国以外は、高関税をかける政策が増えてくると、そこから弾かれた国の不満が溜まり、強硬手段を取る可能性が増えます。米国を中心に関税引き上げの動きが起きないか注目です。
3.原油需要
新型コロナウイルスで、移動に関するエネルギー需要が激減。そのため、原油は、価格が、大幅に下がりました。それだけでなく、移動・旅行・オフィスをはじめとした需要減少は、世界経済を縮小させています。この需要が回復しない限り、原油をはじめ、生産しても在庫を積み上げるだけ。それこそ、戦争による需要増加を求める動きが出てきます。
4.ナショナリズムの勃興
新型コロナウイルス蔓延の原因や責任をどこかに国に押し付ければ、ナショナリズムの勃興に繋がります。すでに、米中対立は激化し、欧米におけるアジア人差別も深刻です。経済不安がナショナリズムにつながるのは、最も危ない。米国と中国の対立激化は、嫌なシナリオです。
5.ワクチン開発
新型コロナウイルスは、経済の一時停止ボタンを押したようなもの。再開するためのボタンとなりえるのが、ワクチン。トランプ大統領は、10年かかるワクチン開発を1年で行うべくフルスロットル。早速、モデルナ社が開発しているワクチン情報に株式市場は一喜一憂。これに成功すれば、量的緩和の効果もあわさって、株価や商品先物の価格が跳ね上がるシナリオを描けますね。
ロックダウン(都市封鎖)による影響が大きいであろう4-6月GDP。米国の予想は、マイナス数十パーセントという衝撃的なレベル。アトランタ連銀のGDPナウによる予想(5月19日)は、2020年第2四半期の実質GDP成長率(季節調整済み年率)で、-41.9%!
Fed:実質国内総生産の推移
リーマン・ショック直後の2008年10-12月期ですら、-8.4%ですから、その凄まじさがわかりますよね。日本のGDPも、10~40%程度という最悪の数字が予想されています。このGDP統計が、新型コロナウイルス後の相場を読むターニングポイントの時期になると思います。