50兆円を投資する欧州の燃料電池車など水素重視戦略で、プラチナ供給が足りない?

2020年8月25日 投稿

 

プラチナを必要とする欧州の水素重視戦略スタート

 

プラチナ&パラジウムの長期的なトレンドの要因に、欧州が2030年までに、メインエネルギーを水素に切り替える「気候変動に対応する水素重視戦略」宣言が出てきました。(2020年7月8日発表)

 

温暖化対策・CO2問題と環境への配慮として、世界で、電気自動車へのシフトが進みみました。そして、欧州は、さらに次世代へと歩みを踏み出し、50兆円規模の金額を投じて、水素エネルギー社会の実現を目指します。

水素社会の到来

 

欧州は、水素エネルギー社会で米国とアジアに勝つ

 

自動車をはじめ様々な産業で、水素エネルギーに投資して、環境と雇用の両立を目指すというプロジェクト。うまく行けば、アジアやアメリカにリードされているリチウムイオン電池から脱する事ができます。このまま、リチウムイオン電池を利用したEV(電気自動車)の時代が来れば、欧州で作られている現在のエンジンはいらなくなり、雇用を失うかもしれません。そこで、水素エネルギーに力を入れることで、環境と雇用の両立を目指すというシナリオです。

 

水素を利用した燃料電池とプラチナ

 

そこで、登場するのが商品先物で、取引されている白金(プラチナ)。燃料電池は、水素と酸素の化学反応で、電気と水を発生させる仕組み。この化学反応をうながすための触媒にプラチナが使われています。プラチナ触媒なしでは、高温・高圧が必要となり、自動車への搭載は無理な話。

 

ところが、プラチナ触媒を使えば、低温での反応ができるようになります。それでも、80~100℃になるため、プラチナ以外で触媒を作るのは難しいのです。

 

高価で希少な貴金属「プラチナ」

 

皆さん、御存知の通り、プラチナは非常に高い貴金属。生産量も少なく、生産地も偏っています。もし、燃料電池自動車が普及すれば、パラジウムのように、プラチナも急騰していくのでしょうか。

 

●大阪白金の月足チャート:2020年8月20日

大阪白金のチャート
1g3,185円の高価な貴金属

 

その可能性もあると思います。しかし、ネックになるのは、プラチナの希少性。いくら燃料電池自動車を普及させたくてもプラチナ価格が上昇していけば、自動車の値段も上がってしまいます。補助金を出すにも限度がありますしね。そのため、触媒に使うプラチナの量を減らす工夫や代替品の開発にも、お金が投じられており、プラチナ価格が高くなるほど、代替品開発が進み、プラチナ需要が減ることになります。

 

欧州で燃料電池車が、普及すれば、プラチナが足りなくなる?

 

かつて、燃料電池車を一台作るのに、プラチナは、約100g必要でした。そこから効率化が進み、約40gとされています。実は、これでも、水素社会が到来すれば、プラチナはまったく足りません。

 

1台40gのプラチナを使えば、1,000万台の燃料電池車を生産するために、400トンのプラチナが必要。それに対するプラチナの年間供給量は、わずか200~250トン。

 

もう、これだけで、全然、足りません。ちなみに、2019年の世界自動車生産台数は、約9178万台ですから、全部、置き換えることになれば、プラチナ戦争がおきてしまうでしょう。

 

技術開発でプラチナを使う量を減らせ

 

欧州の目指す水素社会のためには、プラチナの使用量をへらすしかありません。2018年4月に公表された電気通信大学の岩澤特任教授の研究では、「わずか1gのプラチナ」でOKとのこと。2030年の実用化を目指しているようで、水素の普及には、効率の良いプラチナ触媒の開発が不可欠です。

 

水素社会の到来で、長期的なプラチナ価格はどうなる

 

プロジェクトが進んでいけば、欧州の主流であるディーゼル車の生産は、燃料電池車に置き換わっていくことになります。2015年のフォルクスワーゲンによる排ガス不正以降、欧州でのディーゼル車生産は減り、プラチナ価格は下落。一方、ガソリン車の触媒に使うパラジウムは高騰しました。

自動車用触媒について

 

そのため、燃料電池車が普及していけば、プラチナの需要と価格を支える要因になると思います。欧州だけでなく、世界で水素エネルギーが実現できるかのキーポイントの一つがプラチナ。

 

パラジウムのように、高騰していくかどうかは、プラチナ触媒の代用品が開発されるかどうかの影響が大きいでしょう。そして、プラチナの主要生産国である南アフリカとロシアとの関係。欧州は、この両国との良好な関係を維持していくミッションも必要となります。



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