取組高から考える相場(金と原油)
9月9日から13日までの金は前週末より7円値下がりして、一般投資家(投資家、取次者経由)は9,533枚、売り越しました。

トータルは9,558枚の売り越しです。
続いて一般投資家(投資家、取次者経由)日々の玉の動き、NY金ETF残の推移です。

9月9日から13日は7円の値下がりの週でしたが、9,533枚売り越しました。9月9日には一瞬、78枚買い越しました。翌日は50円安のもかかわらず、3,421枚売り越しているんですよね、そこからは売り上がりの手口になっています。何故でしょう?ここで東京金の日足チャートを見てみましょう。

東京金の日足チャートを見ると、9月8日に包みの陰線が出現し、9月10日の50円安の陰線で、黒三兵が出現したんですよね。普通だったら、トレンド転換の合図かと思ってしまいます。だからここ最近の売りあがりも納得できます。NY金のETFも利食い気味ですしねえ。
チャートの形は三尊を形成するか、持合い継続か?といった感じです。
それにしても、9月13日には欧州中央銀行(ECB)理事会で、利下げや※量的緩和再開など追加金融緩和策の導入を受けて、5,255円まで吹き上げる場面がありました。ここまで戻ると、売りを誘う押し目だったのかと思ってしまいます。
ただその後は、トランプ政権が中国との貿易戦争の終結を、関税のいくつかを取り消しても、近々の解決を模索しているとのニュースが報道され、長い上髭を引きました。
米中問題進展のニュースはやっぱり売りに反応するみたいですね。
ここで金価格を動かす※量的緩和についておさらいをしてみたいと思います。
日本の場合の量的緩和とは、日本銀行が、市中に出回るお金をたくさん増やすことを目指す、金融緩和政策の1つとなります。
そして、たくさんお金が出回るようになった結果、企業や個人の持つお金が増え、たくさん使うことで、景気が良くなることを目指します。
具体的にどうすれば市中に出回るお金をたくさん増やすことができるのでしょう?
まずは、金利の引き下げです。貸出金利が下がると、企業や個人は、お金を借りて、設備投資や、大きな買い物をしやすくし経済の活性化を目指します。
しかし今は、金利を下げるには限界まできているので、今度は量的緩和を行います。銀行や証券会社などの金融機関が、日銀に持つ当座預金口座の残高を目標値をもって増やすことです。
ちなみに、金利が下がったところで、日銀が民間金融機関の国債の買取をやめると、量的緩和と言わず、通常の金融緩和政策となります。目標値を持つことがポイントです。
さて残高を増やすとはどういうことでしょう?
当座預金残高を増やすと、民間金融機関が自由に使えるお金を増やすことになります。
その結果、民間金融機関は、利子のつかない当座預金にお金を放置せずに、国民や企業に貸し付けたりして、利益を出していこうという動きになるのです。
このような構造で、お金の流れを活性化させる狙いがあります。
一番重要なのは当座預金残高の増やし方です。民間金融機関が過去に購入した日本国債を、日本銀行が買い取ります。
そして、国債の代金は民間金融機関に渡され現金が増えます。しかし日本銀行は実際に現金を用意して、払うわけではありません。
帳簿上、代金を払ったことにして、民間金融機関に渡します。この時の日本銀行が払う代金は、無から生み出されます。つまりお金を刷るということですね。
これが量的緩和ということになります。
量的緩和が続く中、お金を持っているだけでは、価値が減ってしまうので、物を買って価値が減らないようにしようという動きが起きます。
長く不変の価値があるものに流れやすくなりますね、それは金(ゴールド)や土地、株などもあてはまりそうです。こういった流れを覚えておいてもよさそうですね。
続いて国内3連休中、原油に大きなニュースが入りましたね。東京原油の中身を見てみましょう。

続いて一般投資家(投資家、取次者経由)日々の玉の動きです。

東京原油は上の表には出ていませんが、5月16日、45,780円、35枚の売り越しから、本日までずっと買い下がりです。8月27日、35,640円は最大の買い越し枚数で3,497枚でした。その日から上がった日に売って、下がった日に買ってと、やりくりしていました。
原油は金や白金と違って、買い越しの枚数が一桁少ない銘柄でもあります。動く割には一般投資家(投資家、取次者経由)の人気はいまいちみたいです。
東京原油の日足チャートを見てみましょう。

始値が9月13日の夕方で、3連休を挟んだ9月17日の値段が日足となるので、休みの間にアクシデントがあると、こういったチャートになります。40,000円台はちょっと抵抗がありそうですが、入ってきたニュースが不安を掻き立てるものだったので、少しパニック的な動きになっています。
改めて今回サウジアラビアで起きた事件をおさらいしてみましょう。
サウジアラビアの中核的な石油生産施設が複数のドローンによる攻撃で爆破、炎上のニュースが9月13日米国の原油取引終了後に入りました。
これを聞いた瞬間は大変なことが起きてしまったと思いました。
同国と対立するイエメンの親イラン武装組織フーシ派が10機のドローンで攻撃したと犯行声明を出しています。
これを書いている9月17日火曜日朝の段階で分かっているのは、この攻撃によりサウジアラビアが1日当りに供給できる石油日糧が570万バレル減少するそうです。これは、サウジアラビアの供給できる50%に相当します。
しかし今回の供給量の減少は、世界の一日当り5%に相当するそうです。
これを聞くとそんなものかなとも思います。
トランプ大統領は日本時間9月17日朝に戦略石油備蓄の放出の承認を行い、上げ幅を縮小する場面もありました。
NY原油日足のチャートを見てみましょう。

ニュースを受けて月曜日の足は大きくギャップを空けての上昇となっています。高値と安値で4.61ドルもあったので、パニック的な動きとも言えるでしょう。
さて今後の原油相場を考える上で、ざっくりと参考になりそうなことを考えてみましょう。
まず中東は宗派の対立が背景にあるので、簡単に対立の図式を説明しましょう。
今回サウジを攻撃したフーシ派はイエメン政府と対立する武装組織です。イランとはイスラムの宗派(シーア派)で(フーシ派)と一致します。フーシ派の攻撃をイランが知らないはずはありません。
サウジはイランと宗派が異なる(スンニ派)とイエメン政府を支援しており、さらにアメリカによるイラン制裁にも協力的です。このような、対立構造があるんですよ。
しかし今回のイランによる(恐らく)サウジアラビアに対する攻撃は不思議なタイミングなんですよねえ。
トランプ政権が9月10日にイラン制裁に強硬的だったボルトン大統領補佐官を解任した直後であり、イラン制裁も緩和されそうなタイミングだったので、今回の攻撃は意味がかなり深いことなのかもしれません。なにせフーシ派とイランは米国との対立姿勢を鮮明にしましたからねえ。
今後はイランとアメリカとの衝突と進展が今後の原油価格上昇と下落の関係になりそうです。
米中貿易問題の衝突と進展が金価格上昇と下落の関係に図式が似てきそうですね。
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