為替監視レポートから米国政府の中国政府への要求を読む

    • 更新日:19/05/30
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Macroeconomic and Foreign Exchange Policies of Major Trading Partners of the United States このレポートは「為替監視レポート」などと呼称されていますが、正式名称は『アメリカ合衆国の主要貿易相手国におけるマクロ経済と外為政策』です。半年に一度公表されるレポートで昨日公表されました。米国財務省が議会に報告するために、「3つの条件」のうち2つ以上を満たした国を選び、その国のマクロ経済の状況を概観するとともに、為替操作などをしていないかどうかを監視する位置付けのレポートです。 その「3つの条件」とは、次のとおりです。


  ①アメリカ合衆国との二国間貿易において、年間、200億ドル以上の貿易黒字を計上していること(サービス収支除く)
  ②経常黒字がその国のGDPの2%以上を占めていること
  ③外為市場において過去12ヵ月間のうち、少なくとも6ヵ月以上、一方的な為替介入を行っていること


米国財務省は、この3つのうち、2つ以上の条件を満たしている国を機械的に選び、その国が自国の産業の競争力を助けるために為替介入をしていないかどうかを監視する報告書です。今回、この条件に照らして選ばれた国は、中国、日本、韓国、ドイツ、イタリア、アイルランド、シンガポール、マレーシア、ベトナムの9ヵ国ですが、最も力点が置かれている国は、中国です。以下は、中国に対する米国財務省の報告の要約です。


  •中国は米国との貿易において、非常に巨額で継続的な貿易黒字を計上し続けていて、しかもその額は増大しており、米国の主要貿易相手国の中でも抜きんでている。
  •2018年12月までの1年間を通じた中国の対米貿易黒字額(サービス除く)は4190億ドルに達している。
  •かかる巨額の貿易黒字は、中国の継続的で広範囲な非関税障壁、非市場型メカニズム、国による補助金、その他中国との貿易・投資関係を歪める差別的な取扱いに起因するものである。
  •これらの慣行が存在するがために、中国では輸入品に対する需要が抑制され、結果的に貿易黒字額がさらに拡大する要因となっている。 
  •中国の政策は外国からの投資を阻害し、結果的に人民元の価値を下げることにつながっている。 
  •2018年を通じて、人民元は米ドルに対して5.4%下落し、取引加重平均ベースでもちょうど2%下落している。 
  •こうした状況を放置すれば、中国の対米貿易黒字はさらに拡大されるであろう。 
  •財務省としては、中国がG20の場で表明した、自国の為替相場を輸出競争力を高めるために使わないというコミットメントをきちんと守ることの重要性を強調したい。 
  •財務省としては、中国に対して引き続き為替相場の透明性を強化することと、手続と目標を守ることを強く勧告する。 
  •財務省は中国が引き続き為替介入の状況を非開示としていることに深く失望している。 
  •財務省としては人民元の状況を引き続き入念に監視するとともに、中国当局との進行中の協議についても関心を払うこととしたい。 
  •中国が経済成長と人民元に対する信頼を獲得するためには、よりマーケット・ベースでの経済改革を進めるべきである。 
  •中国は市場の力の役割を拡張し、家計消費の成長を振興することで、投資に過度に偏重した経済に対する改革を積極的に進める必要がある。 
  •このような改革こそ、中国経済の持続可能性の土台を強め、ひいては世界経済の成長と米国に対する貿易黒字の削減に寄与するものである。 


米国財務省のいつになく強い口調からは、米国が中国に対し、強いフラストレーションを感じている様子が報告されています。米国は中国が「非関税障壁」「補助金」といった「市場メカニズムを歪める仕組み」が対米黒字を高める要因になっているとして中国を強く非難しており、こうした改革とあわせてGDPに占める消費の弱さを是正することで、対米黒字を減らして世界経済に貢献しろと要求しています。また、レポートでは、現在の中国が「競争的な為替相場の切り下げを行っている」と断定することは慎重に避けつつも、その過程で「為替相場の透明性」(原文では “transparency of its exchange rate” )を要求しており、不透明な為替市場の改革を強く求めています。今回の為替監視レポートでは、ドイツは中国と並んで米国から強く問題視されていますが、マーケットに与える影響がすぐに無い為割愛します。米中貿易戦争は、10年単位の長期戦争になりそうです。



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